採用ブランディングの進め方、採用市場へ効率的に アピールする

「求人募集を載せているのに応募が来ない」というお悩みを持つ中小企業が近年増えており、採用活動が大きな課題となっています。これは、経済全体での労働人口の減少や、働き手の価値観の変化が影響し、従来の手法では必要な人材を確保することが難しくなっています。このような状況下で注目されているのが「採用ブランディング」です。企業が持つ魅力やビジョンを効果的に伝えることで、より多くの優秀な人材を惹きつけることが可能です。

まず、中小企業において人材不足が発生する原因の一つに、競争力のある採用体制を構築するリソースや知識の不足が挙げられます。大企業と比較すると、採用活動にかけられる予算や人手が限られているため、広範な応募者にアプローチすることが難しいのです。また、ブランド力の違いも大きな要因です。中小企業は知名度が低いため、求職者からの認知度が低く、優秀な人材にとって魅力的な就職先として認識されにくい傾向にあります。

中小企業庁のデータに基づく最新の統計によると、中小企業は慢性的な人手不足に直面しています。特に日本の労働人口の減少が影響を与え、人材の確保が年々難しくなっています。
例えば、「2023年度版 中小企業白書」では、以下のようなデータやグラフが提示されています。

景況調査を用いて、業種別に従業員の過不足状況を見たものである。2013年第4四半期に全ての業種で従業員数過不足DIがマイナスになり、その後は人手不足感が高まる方向で推移してきた。2020年第2四半期にはこの傾向が一転して、急速に不足感が弱まり、製造業と卸売業では従業員数過不足DIがプラスとなった。足下では、いずれの業種も従業員数過不足DIはマイナスとなっており、中小企業の人手不足感は強くなっている。
出典: 2023年版 小規模企業白書「https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/shokibo/b1_1_3.html

このような中で、採用ブランディングは重要な役割を果たします。採用ブランディングとは、企業が持つ文化や価値観、働きやすさを内外に発信し、魅力的な職場環境をアピールすることで、求職者にとって「ここで働きたい」と思わせる戦略です。

中小企業の場合、大企業と違ってアットホームな環境や個人の裁量が大きい職場が多く、成長機会が豊富にあることを強調することができます。また、企業の規模が小さい分、社員同士の距離が近く、意思決定のスピードが速いことや、柔軟な働き方が可能である点なども訴求ポイントとなります。

採用リーダーの72%は、ブランディングが採用に大きな影響を与えると述べています。強力なブランディングを持つ組織は、1〜2倍速く雇用し、
離職率を28%削減します。

TalentLyft

採用ブランディングについて

中小企業やベンチャー企業の場合、大手企業と比べると認知度はどうしても劣っているので、積極的に行う必要があります。
採用ブランディングの具体的な取り組みとしては、まず企業のミッションやビジョンを明確にし、それに基づいた一貫性のあるメッセージを発信することが求められます。例えば、会社が目指す方向性や価値観が共有されていることで、求職者は自分がその企業でどのように貢献できるかを想像しやすくなります。さらに、社員の声やインタビューを採用ページやSNSで発信することで、企業文化を具体的に伝えることができます。特に中小企業の場合、実際に働く人々の姿がリアルに伝わることは、親しみやすさや信頼感を醸成し、求職者に強い印象を与えることができます。

また、採用ブランディングは単に企業の外に向けたメッセージだけでなく、内部の社員にも向けた取り組みが必要です。社員が企業文化やビジョンに共感し、自社に誇りを持っている場合、それが自然と外部に伝わり、ポジティブな採用ブランディング効果を生み出します。社員が企業の「アンバサダー」として外部の人々に自社の魅力を伝えることで、信頼性が高まるとともに、リファラル採用(社員の紹介による採用)も促進されます。

労働者の56%は、給与よりも職場文化を強く重要視しており、従業員の75%以上が会社の文化を応募する前に考慮すると答えています。

Glassdoor

さらに、デジタルマーケティングを活用した採用ブランディングは、中小企業にとって特に有効です。SNSや企業ブログを使って日常の企業活動や社員の様子を発信することで、働く環境や風土をリアルに伝え、親近感を持たせることができます。大規模な広告予算がなくても、コンテンツの工夫次第で多くの人に企業の魅力を伝えることが可能です。特に若い世代に対しては、SNS上での存在感や透明性のあるコミュニケーションが企業選びの決め手になることが多いため、デジタル施策を積極的に取り入れることが求められます。

中小企業における採用ブランディングの進め方について

中小企業における採用ブランディングの進め方は、限られたリソースの中でいかに効果的に企業の魅力を発信し、優秀な人材を引き寄せるかが鍵となります。以下のステップで採用ブランディングを進めていくことが有効です。

1. 企業の強みや価値を洗い出す

採用ブランディングを始めるにあたって、まず自社の強みや価値を整理することが必要です。中小企業の魅力は大企業とは異なり、アットホームな職場環境や個人の裁量の大きさ、成長機会の多さといった点が挙げられます。これらの要素を、どのように求職者にアピールできるかを具体的に考えます。

また、企業のミッションやビジョンを明確にし、求職者が共感できるメッセージを発信することが重要です。求職者は単に給与や待遇だけでなく、企業の価値観や社会的意義にも関心を持つ傾向が強まっているため、これを採用ブランディングの軸に据えることで魅力が伝わりやすくなります。

以下は、「採用ホームページ好感度ランキング」にてTOP10の人気企業の採用コンセプトをご紹介します。

  • ソニーグループ「次の感動を、共につくろう」
  • ニトリ「君の夢は、君を創る」
  • NTTデータ「世界を変える、変わらぬ信念」
  • 三井住友銀行「挑戦者よ、世界を揺らせ」

2. 欲しい人材を明確にする

次に、どのような人材を採用したいかを明確にすることが重要です。求めるスキルや経験、またどのような性格や価値観を持った人材が自社にフィットするかを定義し、そのターゲットに向けたメッセージやアプローチを設計します。中小企業においては、特に自社の文化に合った人材を採用することが重要であり、ターゲットの選定は採用ブランディングの成功を左右します。

3. 採用ページやSNSを活用したオンラインブランディング

企業のウェブサイトやSNSを活用して、採用ブランディングを強化することが効果的です。特に中小企業の場合、大企業のような大規模な広告予算をかけずにデジタルマーケティングを駆使することで、ターゲットにリーチすることができます。

採用ページの改善: 自社のウェブサイトに採用専用ページを設け、社内の雰囲気や働くメリット、社員インタビューなどを掲載します。写真や動画を活用して、職場のリアルな姿を伝えることも効果的です。特に、日常の業務風景や社員同士の交流を映したコンテンツは、企業文化を強く伝える手段となります。

SNSでの発信: Facebook、Instagram、LinkedIn、X(旧Twitter)などのSNSは、若い世代の求職者に向けて企業の魅力を発信する場として非常に有効です。企業の日常や社員の活動、仕事のやりがいを紹介する投稿を定期的に行うことで、求職者に親近感を持たせ、エンゲージメントを高めることができます。

4. 社員を「アンバサダー」として活用する

採用ブランディングを成功させるためには、現在働いている社員の協力を得ることが重要です。3.の項目とも重複しますが、社員が自社の良さを自然に伝える「アンバサダー」として活躍することで、企業の魅力が外部に広まりやすくなります。

具体的には、社員にインタビュー記事を書いてもらったり、SNSで企業のイベントや日常の様子をシェアしてもらうなど、社員の声を直接発信する機会を設けます。また、社員紹介を通じてのリファラル採用(従業員が知人や友人を紹介する採用方法)を促進することで、信頼性の高い採用が実現します。

5. 働きやすい職場環境を整える

採用ブランディングの基盤は、実際に働きやすい職場環境を作ることです。社員が働きやすいと感じる環境を提供することで、その企業で働くこと自体が魅力となり、自然と外部への発信力が強まります。ワークライフバランスの向上、柔軟な働き方の導入、福利厚生の充実など、具体的な取り組みを行うことで、求職者に対しても「働きやすい職場」としての魅力を訴求できます。

6. 実績の可視化とフィードバックの活用

採用ブランディングは短期的な施策ではなく、長期的な視点で進めるべきです。実際にどの施策が効果を発揮しているかを定期的に評価し、改善を重ねることが大切です。例えば、求職者アンケートや採用過程でのフィードバックを収集し、どのポイントが求職者に刺さったのかを把握します。
それに基づいて、メッセージの修正や新たなコンテンツの追加を行います。

まとめ

以上、採用ブランディングの概要、進め方などを解説してきました。
最後に、中小企業が採用ブランディングに取り組む際、短期的な効果を期待するのではなく、長期的な視点で進めることが重要です。採用ブランディングは一度実施しただけでは効果が現れない場合も多く、継続的な発信や社内文化の強化が必要です。
企業が一貫して自社の強みを発信し続けることで、徐々に求職者からの認知度が高まり、優秀な人材が自然と集まるような企業環境を構築することができます。

中小企業にとって採用ブランディングは、限られたリソースの中でも実践可能な、非常に有効な戦略です。企業の魅力を発信し、信頼性を高めることで、競争の激しい人材市場での優位性を確立し、持続的な成長を支えるための基盤を構築することができます。

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