イベントを成功させるための心理学
どんなビジネスを展開するにしても、その成功のために、イベントの開催というものはある意味、必要不可欠な要素であると言えます。
そのイベントを成功させるためには運営のノウハウは勿論、参加者の「心」をどう動かすかという心理学的なアプローチが非常に大切になってきます。
結局のところ、ビジネスというものも人と人の相互のコミュニケーションにより成り立つものなので、心理学的な知見があるに越したことはないのです。
参加者がイベントに関わることには大きく分けて三つのフェーズがあります。それは、「イベント前」「イベント中」「イベント後」の三つです。そのフェーズごとに詳しく考えていきましょう。

■イベント前
「参加したい!」を引き出す心理テクニック
この段階では、参加予定者に「行きたい」と思ってもらい、実際に申し込みという「行動」に移してもらうことを目標にします。そのための有効なアプローチは次の四つです。
(1) 「今しか申し込めない」と思わせる「希少性の原理」
人は「手に入りにくいもの」に大きな価値を感じ、失うことを恐れるものです。具体的には、次のような方法があります。
- 限定席を設ける
- 「限定100席」「VIP席は残り僅かです」
- 期間を限定する
- 「早期割引は今週末まで」「本日17:00までのお申込みで特典付与」
- 特典を設ける
- 「先着50名様にオリジナルグッズをプレゼント」
「今、申し込まないと損をする」という感情を煽り、決断を後押しするのです。
(2) 「みんな参加している」が安心感を生む「社会的証明」
人は他人の行動を「正しい」と判断し、それに従う傾向があります。それを踏まえ、実行できる具体例としては次のようなものがあります。
- サイトに「現在○○人が参加予定です」「昨年は○○人以上がご来場されました」などと表示させる
- 過去の参加者の感想やレビューを掲載する
- 権威あるゲストの来場を予告する
「こんなに多くの人が参加するなら、きっと良いイベントに違いない」という安心感と信頼感を与えます。
(3) 先に価値を与えて信頼を獲得する「返報性の法則」
人は他人から何かを受け取ると「お返しをしなければならない」という気持ちになります。
例えば、イベントに関するコンテンツを無料で提供したり、イベントの登壇者による無料相談会の開催などによって、その条件が整います。
こういったことにより、好意的な感情を抱かせ、「イベントへの参加」という「お返し」を引き出します。
(4) 小さなYESが大きなYESになる「コミットメントと一貫性」
人は、一度決めたことや、表明したことなどについて一貫した態度を取り続けようとします。
まず、「興味がある」ボタンを押してもらったり、「最新情報を受け取る」などのハードルの低いコミットメントをしてもらう、SNSで「#○○に参加します」といったハッシュタグでシェアしてもらう、などの方法があります。
こうした小さな「yes」を積み重ね、最終的に「イベント参加」という大きな「yes」に繋げます。
■イベント中
「最高だった!」と感じてもらう体験設計の心理学
この段階の目標は、参加者に「最高の体験だった」と感じてもらうことです。そのためのアプローチとしては次に挙げる四つがあります。
(1) イベントの印象を決める「ピーク・エンドの法則」

人は、出来事の記憶を、感情が最も高ぶった瞬間(ピーク)と最後の瞬間(エンド)で判断する傾向があります。この法則を利用して、次のような演出でピークとエンドを作ります。
- ピークを作る:サプライズゲストの登場、感動的なスピーチ、特別な演出
- エンドを作る:心温まるメッセージ、全員での記念撮影、記念品の贈呈
このことにより、イベントの印象がより好意的に記憶される可能性があります。
(2) 仲間がいるという感覚が熱量を生む「一体感と帰属欲求」
人は集団に属し、仲間と繋がりを感じたいという欲求を持っています。
アイスブレイクやグループワークなどでの共通の体験や、オリジナルTシャツなどの共通のアイテム、名刺交換会や懇親会などの参加者同士の交流の場を設けることなどが、参加者のイベントへの満足度とエンゲージメントに、大いに役立つ可能性があります。
(3) 五感に訴えて記憶に残す「感覚マーケティング」

ただ「見るだけ」「聞くだけ」といったひとつの感覚に訴えるより、複数の感覚に同時に働きかける刺激の方が遥かに強く記憶に刻まれることが知られています。
さらに近年では、最新の技術を取り入れた体験型演出によって、非日常の感覚体験を作り出すことも可能になってきました。
視界を覆うほどのスケール感、自分の動きや反応によって景色が変化する臨場感など、参加者がその場に身を置いて感じ取る刺激はイベントが終わった後も色褪せない強烈な記憶として残り続けます。
- 視覚
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- レーザービームによる天井や壁面など空間をダイナミックに使った光の演出や巨大プロジェクションマッピングで未来的な非日常空間を創出する
- 夜間や屋外イベントでは、多数のドローンを連携させたフォーメーション飛行によるライトショーで夜空そのものをキャンバスに変える
- XRグラス、デジタルヒューマン、ホログラム、キネティックLED、インタラクティブ床、ウォータースクリーンなど最新の演出技術を取り入れることで参加者の想像を超える圧倒的な没入体験を生み出す
- 聴覚
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- ありきたりなBGMでなく、ミニオーケストラやストリングカルテットの生演奏を導入し、会場を格調高い音楽で盛り上げる
- ゴングや太鼓などの和楽器演奏を取り入れ、伝統と革新を融合させた音響インパクトを与える
- プロのアーティストに総合プロデュースを依頼し、映像・照明などの視覚演出と連動した音響演出でイベント全体のクオリティと統一感を高める
- 嗅覚
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- ドリンクやフードに香り高い素材を使い、食を通じて香りの記憶をイベントと結びつける
- 小型のアロマサシェ(香り袋)やハンドクリームなどをノベルティとして配布し、香りに触れるたびにイベントの良い記憶が蘇る効果を狙う
- オープンキッチンやライブクッキング形式で、その場で立ち上る調理の「香り」そのものを演出として活用する
- 味覚
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- 一般的なケータリングにとどまらず、一流ホテルの総料理長や著名シェフが監修したプレミアムな料理により、イベントの「特別感」を増幅させる
- ワインや地酒、クラフトビール、オリジナルカクテルなど、そのイベントでしか味わえない特別なドリンクを提供する
- 高級食材や世界でも珍しい食材を使った料理やアミューズを提供し、非日常の味覚体験を演出する
- メニューカードやコースターなどテーブルウェアにロゴをあしらい、細部にまでこだわることで「食」の場全体でブランドの世界観を統一する
- 触覚
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- 製品・サービスの展示ブースを体験型にし、来場者が直接触れて操作・試用できるインタラクティブデモを実施する
- VRヘッドセットとハプティクスデバイス(振動・圧力を伝える装置)を組み合わせた最新デジタル「触感」を体験できるコーナーを設ける
- 一方、木・革・布・土・水・風など自然が持つ多彩で非デジタルな感触の豊かさを体験させ、対照的な触感体験を提供する
- 会場内にマッサージチェアやリラクゼーションブースを設け、休憩時間も特別な空間を提供する
これらは参加者の感情に働きかけ、より強くイベントを印象付け、深い満足感を与える可能性がある方法です。
(4) 続きが気になる仕掛けを作る「ツァイガルニク効果」
人は完了した事柄よりも未完了の事柄の方をよく記憶しているという心理現象です。これを利用して、次のように情報を小出しにします。
- 「この話の続きは午後のセッションで!」
- 「重大発表はイベントの最後に!」
- 次のイベントの予告をする
こういったことにより参加者の興味を持続させ、イベント全体への集中力を高めます。
■イベント後
ファンになってもらうための最後の仕掛け
この段階の目標は、イベントを一過性のものにせず、長期的なファンになってもらうことです。
(1) 来て良かったを確信に変える「認知的不協和の活用」
人は二つの認知(信念・考え・行動)が矛盾している状態を不快に感じ、それを解消しようとします。
この具体例としては、イベント終了後すぐにお礼メールを送る、「○○という学びがありましたね」「素晴らしい出会いがありました」などとイベントの価値の再確認を行う、などがあります。
このことにより、「イベントに参加して良かった」と参加者の自己評価が固まり、満足感の向上につながる可能性があります。
(2) イベントを一度きりで終わらせない「コミュニティ戦略」
イベントで生まれた熱量や一体感を維持するための場を提供します。
- 参加者限定のSNSグループを作って継続的な交流を促す
- 定期的にニュースレターを送り、関連情報や次回のイベント案内などを届ける
こうしたことによって、イベントが終わっても続く関係性が構築され、ロイヤリティの高いファンを次のイベントに誘導することができます。
まとめ
イベントの成功というものは単に企画力や運営力のみで決まるものではありません。
イベント前には「行きたい」と思わせる期待感を演出し、イベント中は「最高!」と感じさせる没入感を創出、またイベント後には「また参加したい」と思える関係性を構築することが大切であり、こうしたことを完璧にクリアしてこそ、理想的なイベントが開催できるのです。
前述の三つのフェーズで、それぞれ、その状況に合ったアプローチをすることで、イベントはただの集まりから「忘れられない感動体験」へと昇華されます。
人間心理というものはとても複雑であり、それを読み解くのは決して簡単なことではありませんが、綿密な計画の下、しっかりと参加者の気持ちになって考え、行動すれば、イベントの成功が期待できるでしょう。ここで上げた心理テクニックは、何れも「有益なコンテンツ」という大前提があって、初めて効力を発揮するものです。一番肝心なことは、心理テクニックを小手先の技として使うのではなく、参加者の心に寄り添う、という極めて基本的な理念の上で応用していく、ということです。
結局のところ、一番大切なことは、主催者であるあなたの姿勢であり、イベント成功への熱い想いなのです。






